Nov 11, 2010
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連載・世界一周サムライバックパッカープロジェクト:
シリコンバレーにある、ベンチャー企業を対象としたインキュベーション施設「プラグアンドプレイテックセンター」。そこで日本企業向けの支援活動をしているサンブリッジの川鍋仁さんに、今までの歩みや現地の状況について尋ねた。
【シリコンバレーの「Plug and Play Tech Center」、ほか】
「シリコンバレーにPlug and Play Tech Center(プラグアンドプレイテックセンター)という面白いところがあるよ。君も起業していたのならば、訪れてみるといいよ!」
そんなご紹介をいただいて、ベンチャー企業を対象としたインキュベーション施設であるプラグアンドプレイテックセンターを訪れました。
同施設には訪問時点で300社超の立ち上げ段階のベンチャー企業がオフィスを構えていました。ビジネス領域などによってオフィスエリアが区切られており、iPhoneアプリを事業としている会社が集まるiPhone Apps Pavilionというエリアがあったりします。また、施設内のカフェテリアで情報交換ができるなど、相乗効果も見込める環境作りを心がけているようです。
そんなプラグアンドプレイテックセンターで、日本企業向けの支援活動をしているサンブリッジの川鍋仁さんにお話をうかがいました。
●1週間のシリコンバレー滞在で転職を決めた
――これまでの歩みについて教えてください。
川鍋 大学卒業後、専攻とはまったく無関係のIT企業のCSKに入社し、ソフトウエアエンジニアになりました。インターネットをまだ一般の方々が使えない時代でしたが、会社がWIDEプロジェクト※に参加していたおかげで、入社3年目にインターネットの研究ができました。
※WIDEプロジェクト……慶應義塾大学教授の村井純らが中心になって1988年に設立された、インターネットに関する研究プロジェクト。
そんな時、出張でたった1週間ですがシリコンバレーに来たことで、この業界の本当のすごさと本物のスピード感を経験しました。また、この業界が 米国企業に支配されていることを痛感し、日本に帰ってから、当時米国では飛ぶ鳥を落とす勢いだったものの、日本ではほとんど誰も知らなかった日本オラクルに転職することにしました。
入社してすぐ、自分の担当製品が本社の米国ではなく英国であることを知り、1年後にはOracle UKで働いていました。
5年後に日本に帰ってきた時には、日本オラクルは東証一部上場企業となっており、社員数は入社時の8倍の2000人以上になっていました。大きく成長したOracleを見ながら(&感謝しながら)、「もう一度、“成長痛”を感じるほど急成長するシリコンバレー型ベンチャー企業で働きたい」と夢見るようになり、シリコンバレーに本社を置くIPLocksというベンチャー企業に入社、開発部門を統括するポジションで渡米しました。
数年後、会社が事業売却と本社の日本移転という形でexitした結果、米国での仕事がなくなりました。しかし、私自身は日本には戻らず、プラグアンドプレイテックセンターに身を置きながら、転職や起業を志すことにしました。
その時に奇しくも入居してきたのが、IPLocksに投資してくれていたサンブリッジのアレン・マイナーでした。早速、ビジネスプランを持って会いに行きましたが、私の持っていったビジネスプランにはほとんど関心を示さず、代わりに一緒に働くことが許されました(笑)。
――現在の仕事内容と魅力を教えてください。また、プラグアンドプレイテックセンターの魅力や特徴をご説明ください。
川鍋 サンブリッジの米国での主たる業務はベンチャーキャピタルなので、アナリストをしています。しかし、一昨年から、日本のベンチャーの海外展開の支援と、米国で起業する日本人の支援を始めています。
また、それらを加速させるために、以前日本(渋谷のマークシティ)で行っていたSunBridge Venture Habitat(インキュベーション事業)を、プラグアンドプレイテックセンターのJapan Pavilionとして再オープンし、名前も新たに「Global Venture Habitat」として、活動を本格化しています。
プラグアンドプレイテックセンターは、サンブリッジを含め、200社以上の企業が入居しているインキュベーションセンターです。
ここの最大の魅力はオープンなオフィス空間によって感じられるエネルギー、シリコンバレーとそれ以外から集まってくる投資家、起業家、企業などからなるネットワーク、そして飽きることを許さないかのようなイベントの数々です。「ここにいるだけで小さなシリコンバレーを体感できる」といっても過言ではありません。サンブリッジは、この環境を最大限に生かせるように、Japan Pavilionをこの中に作ったのです。
サンブリッジのGlobal Venture Habitatは、日本のベンチャー企業が日本だけでなく、グローバルに活躍できるよう、最大限のサポートをします。そのため当然、我々自身がビジネス、とりわけ米国および世界のIT業界とその事業に強くなければなりません。その点では、アレン・マイナーや私自身の経験が最大限に生かされています。
自分の経験で人の役に立つ機会を作り出せるのは、とてもうれしいことです。そして、成長していく日本のベンチャー企業と一緒に私もさらに成長したいと思っています(この歳でも)。
――今、注目している業界やサービスは何ですか?
川鍋 ベンチャーキャピタルということで、今は「cleantech(環境ビジネス)」と言いたいところなのですが、餅は餅屋ということで、最も興味があることはSaaS型(クラウド)サービスの大企業への浸透具合です。必ずどこかでブレイクスルーが起きます。そんなに先の話ではないと思います。
――海外勤務経験が豊富な川鍋さんですが、海外での一番の困難は何でしたか?
川鍋 海外という意味では、やっぱりビザでしょうね。リーマンショックの時には、ビザをスポンサーしてくれる会社が激減したので、シリコンバレーの人口も相当減りました。
困難を乗り越える方法は「人事を尽くして天命を待つ」。これだけです。天命とは、今の会社でこういう仕事をすることだったようです。今はグリーンカード(米国の永住権)もあるので、さらなる挑戦ができるようになりました(笑)。
――機会があれば働いてみたい場所(国・都市)はありますか? あれば理由も教えて下さい。
川鍋 日本でも欧州でも米国でも働いたので、特にありません。ただ、働かなくなったらモナコに住みたいです。
――今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。
川鍋 日本のベンチャー企業を、世界のベンチャー企業にすることです。特に、日本のソフトウエアやインターネットサービスが世界で有名になる姿を死ぬまでに一度は見たいと思っています。
――最後に、日本の若者にメッセージをお願いします。
川鍋 考えることはとても良いことです。考えた上で、自分なりの結論を出し、そして、必ず実行することが大事。「習うより慣れろ」ということで、実践あるのみです。
試行錯誤は必ずありますが、自分で決めてやったことはダメでも納得できるでしょう。ダメなことがたくさんあっても、経験を積めば、道は開けると思います。
●まずシリコンバレーに来て、雰囲気を肌で感じてほしい
川鍋さんは「日本のベンチャーにもっとシリコンバレーに来てほしい」とおっしゃっていました。「観光でも、何かの仕事のついででも、何でもいいからまずはシリコンバレーに来て、この雰囲気を肌身で感じてほしい。実際に来て、肌で感じないと分からないことが世の中にはある」と主張されていました。
プラグアンドプレイテックセンターは、ベンチャーキャピタルにとって調査段階のベンチャー企業にも門戸を開いてくれるということです。シリコンバレーでの可能性を検討する際には、ぜひプラグアンドプレイテックセンターのことを思い出してください。
僕は数時間の見学でしたが、事実プラグアンドプレイテックセンターには勢いがあると感じました。川鍋さんは「自身の経験を生かして、次世代の日本のベンチャーを輩出したい」と強く考えておられました。「死ぬまでに日本のソフトウエアやインターネットサービスが世界で有名になるところを見たい」という部分は多くの人が思い描いていることなのではないでしょうか。
川鍋さんは思うだけではなく、それを実際に手助けするための活動を仕事としています。僕ら若者世代から、そんな期待に応えることのできるサービスを世の中に創り出せたらと強く思います。
(太田英基)
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